慶伊道彦 IVY STYLE Film / “THE DETECTIVE” Frank Sinatra

Kay Coffee Break

タイトルが、Frank Sinatra in “The Detective” シナトラが待ち望んだ役柄だった。ジャズ・シンガーやミュージカル・スターとしてのイメージが強いシナトラだが、こんなに渋い役をするとは!そこがまたクールで、シナトラがイメージチェンジを狙った路線と考えられる。

フランク・シナトラにとって67年からのDitective 3部作、”トニー・ローム” “刑事” “セメントの女” 、これらの映画ではそれまでのエンターテナーなシナトラ・スタイルとは別な顔をみせる。この当時52才、艶っぽいシナトラとは違い渋くて人間味の増した落ち着いた存在感で刑事役(探偵役)を魅せる。

刑事役ゆえかアメリカン・コンテンポラリー・スタイルのスーツに身を包む60年代のシナトラ風ハードボイルド・スタイルがまた決まっている。当時のハリウッドは、トラディショナル・スタイルをコンテンポラリーにアレンジするのが流行り。スリムなアメリカン・スタイルを好むシナトラは、ここではコンポラ・アイビーなスーツに身を包み、シャツは白のオックスフォード・ボタンダウン、ネクタイだけ色を取り込む。< 濃紺✖️ブルーのポルカドット・タイ、大胆な3段ストライプ・タイ、ハーバート・レジメンタル・タイ、一見、無地に見えるがストライプのスリムタイ、実は細かな2色ストライプ・タイ>

濃紺✖️ブルーのポルカドット・タイ

シナトラ流アイビーは、ウィンザーノットにも現れる。スーツのディテールは、ボックス・シルエットでステッチはアイビー仕様の2 ボタン、ショルダーがコンチ風でノーベント (サイドベントの場合もあるが)、ややロールが小さめな白のボタンダウン・シャツ、この場合アイビー派は、プレーンノットでネクタイを結ぶのだが、ハリウッド俳優の多くはウィンザーノットで結ぶ。コンチ調を取り入れるというちょっとした拘りだろう。(シャツ衿をハイ・カラーにするのと同様な)

ポルカ・ドット・タイを合わせると、相手に刺激を与えず好印象を与えるというのがアイビーの普遍的な鉄則である。ネイビー地にブルー水玉のネクタイは目立つことを嫌う刑事役にはピッタリ。ポルカ・ドットは、スタンダードの中のスタンダードだ。

ブリムの狭いハットをやや傾けて浅めに被るのがシナトラ流、このハスに被る粋なテクニックはクラシック・スタイルのスーツにドット・タイを合わせる事との対比で面白い。

となれば、コートも当然こうなる。一見ラグラン・ショルダーかと思ったら、なんと!スプリット・ラグラン・スリーブなる代物、前面がセットインで後ろがラグラン。そして袖口にはカフストラップ。ボックスコート風ゆったりとしたシルエットと合わせて、渋い大人を演出するコートである。素人にはどうにもわからないところにこだわるのが、ハリウッド・スター・スタイルかと。

アイビーとはまるで接点のないシナトラ・スタイルだが、なぜアイビー派にも人気があるかが、この映画からわかる。アメリカン・スタイルの中に、アイビー要素をしっかりと取り入れ、あたかもジャズマン・アイビーのごときクールさを僕らに教えてくれるのだ。この映画のシナトラは、シンガーとしてのシナトラとは別物、<シナトラ=艶もの>と言う思い込みを、一旦忘れて観たい映画。

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