Kay Coffee Break
僕が子供の頃は(60年代初め) ウエスタン映画が花盛り、アメリカ映画イコール西部劇だった。特にジョン・ウェインが善玉の星だった。ところが高校生になり情報にオマセになった頃、実は西部劇は開拓者白人側からの一方的な描き方で、インディアンは被害者側なのだと知り (現在では誰もが知っている事だが) 急に興味が薄れていった。ちょうど入れ替わるように、マカロニ・ウエスタンなる西部劇がイタリア発で公開され、そちらは白人も悪漢となり退治されるというそれまでとは違うストーリー、それが大受けで僕も嵌った。(因みにアメリカではスパゲッティ・ウエスタンと呼ばれ、B級映画と蔑まされたが) “荒野の用心棒” は、クリント・イーストウッドがスターになるきっかけとなった映画として知られる。

年月が経ち僕も60才を過ぎるとまたまた映画の好みが変わってくる。何よりあれほど好きだった難しい映画が苦手となってきた。クラシックでシンプルな映画を好むようになった。時代劇やウエスタン映画も然り。時代劇では市川右太衛門の ”旗本退屈男” のように決まりきった殺陣やセリフが抵抗なくなり、それを待って拍手していた昔の観客を思い出したり。ウエスタン映画でも同様で、白人開拓者対インディアン(今は、ネイティブ・アメリカンと呼ぶ) の図式がそれほど気にならなくなり、ジョン・ウェインのウエスタン・スタイルがカジュアル・スタイルの参考となった。時代劇と同じで、ウエスタン映画でも正義対悪漢という当時の映画パターンなんだと考え、社会問題としてではなく娯楽作として捉えた。

そう考えて、スタイル重視でウエスタン映画を観出すと素敵な映画にたくさん巡り会った。これは、マカロニ・ウエスタンにも言えた。ジョン・ウェインのジーンズのロールアップ、ゲーリー・クーパーのリボン・タイ、マックイーンのデニムシャツ、などスターのスタイルがそこにはあった。
ラルフ・ローレンは、若い時期からウエスタン映画、なかでもジョン・ウェインやゲーリー・クーパーのスタイルが好きだったようで、New Traditional Styleが一段落した70年代後半、ウエスタン・スタイルとトラディショナル・スタイルの融合したラインを打ち出すと、ニュートラディショナルを初めて打ち出した時と同様なビック・ウェーブが起きたのだ。

一例でシャツをとり上げると、NYのクラシックなウエスタン・ショップ “Billy Martin” のウエスタン・シャツと比べると、衿は小さくなり、色柄もアイビーな素材を使ったシャツで、それでいてスナップボタンやダブルポケットなどのディテールは残してある。ヘリンボンのツィード・ジャケットにもジャスト・フィット、少しだけアレンジして都会風なスタイルに落とし込むのがラルフ・ローレンの真骨頂だった。瞬く間にウエスタン・アイテムがファッション・ピープルに受け入れられた。ランチコート、コーデュロイベスト、コンチョベルト、ナホバジェリー、スエードジャケット、ウエスタン・ブーツ、、ちょっとの視点の違いで、ダラス・カーボーイ・スタイルが、ニューヨーク・ウエスタン・スタイルとなるのだった。
参考になるウエスタン映画は沢山あるが、ジョンウェイン主演では ”捜索者” “勇気ある追跡” など、ゲーリー・クーパー主演では “真昼の決闘” “ベラクルス” など、面白くまた参考にもなる。



他に好きな映画として グレゴリー・ペックの “大いなる西部” ヘンリー・フォンダの “ワーロック” ジェームス・ガーナーの “墓石と決闘” など多数。どの映画からも、カジュアル・スタイルのヒントがもらえる。
ラルフ・ローレンのウエスタン・スタイル絡みで女優の話ですが、アリ・マッグローを取り上げたい。”ある愛の詩” での素敵なセブンスターズ・センスが浮かびますが、雑誌 “ハーパーバザー” “ヴォーグ” などファッション雑誌でも、ヒップな写真を見る事ができます。デニム、ターコイズジェリー、スエードジャケット、メキシカンベルトなどと組み合わせし、アイビーとアメリカン・ウエストを融合した独特なボヘミアンルックで魅せました。当時のラルフ・ローレンのイメージ・キャラクターであった事がうかがえます。


僕がワシントンのホテルでローレン氏のウエスタン・スタイルに出会った事は以前お話ししましたが、それ以来、僕はウエスタン・ショップ通いが続いた。大阪ではFUNNY 、東京ではBailey Stockman、NYではBilly Martinと。2年程ウエスタン・アイビー被れとなった。

今でもその当時のコレクションは、少しだけ残っている。ターコイズ・リング、バングル、コンチョベルト、オルテガ・ベスト、、、残念なのは、あれほど持っていたリボン・タイが一本も残ってないという事。稀に締めてみたいと思うのだが。いずれにしろ、72~77年頃のウエスタン・アイビーの想い出話となった。
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